建物の魅力

 川越織物市場は、明治末期の建物ではありますが、伝統的様式を濃厚にのこしています。蔵造りの建物群に勝るとも劣らないとの評価が得られています。
 どのような点が特徴でしょうか。

 第1に、市場棟が平行に対面で建築されています。
 市場としてのにぎわいをつくるためでした。建物の間の広場は、市場として、人が自由に交流できる公共と私有が交じった場所としての意味を持ったと思います。市場ではなくなり、住居となった後もこのスペースでラジオ体操が行われたりすることがあったようですが、そうした半公共・半私有の場としての機能が続いていたことを示すのではないのでしょうか。

 第2に、深い下屋があり、これがアーケード的機能を持ちました。
 これは、市場建築としての特色でもあります。
 同時に、広場と相まって、半公共・半私有の場としての機能も持ち続けてきました。

 第3に建物としても、かなり力を入れたものであることがわかります。
 具体的には、
 第1に、1階の太い梁があり、格子戸が連続することによって、統一感とリズムを生み出だされています。

 第2に、2階は格子です。その両側に戸袋があります。戸袋はけやきの一枚板です。木目の美しい見事なものです。

 第3に、下屋にナマコ板を採用(大波板)しています。広くて開放的な下屋を実現するために軽くて丈夫な材料が必要。亜鉛びき鉄板(コールタール塗り)。明治のころは安いものではありませんでした。当時のはやり(明治の日本橋の商家の絵図、門塀の写真など)でした。

 第4に、東棟一番奥2階の屋根には川越の「川」と市場の「市」をデザインした特注の丸瓦を用いています。川越織物市場の象徴的な部分です。屋根の瓦(風切り瓦のともえ部分 川市マーク)

 1階の各店舗の扉は格子戸と木戸の二重の揚戸になっています。防犯のためでしょうか。この時期はガラスが普及していないので、木の揚戸。格子が揚戸になっているのは、川越でも唯一です。
 揚戸ひとつ分が1つの店です。これらは現代のシャッターと同じように、上へ持ち上げて収納することができます。左右大きい戸と小さい戸を揚げたあとは、柱を取り外すことができます。これで完全に間口をひらくことができます。なかには50cmほどの土間があり、その先は畳敷きになっています。このようなユニットが西棟に12店舗分、東棟に10店舗分ならんでいます。